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ポリフェノールの抗酸化効果を化学構造で説明。多く含む食品は何?



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野菜や果物をはじめ、緑茶やコーヒー、ワイン等にもポリフェノールは豊富に含まれています。

摂取すると体内から活性酸素を除去してくれる“抗酸化作用”が強いとされるポリフェノールは、ストレスや化学物質の影響で日々活性酸素にさらされ続ける現代人に欠かせない「第7の栄養素」として、その健康や美容の効果に大いに注目が集まっています。

ダイエットに役立つ素材としても、話題に上ることも多いかもしれませんね。


多くの介入試験や疫学調査の結果から、血管の老化を防ぎ、心疾患や動脈硬化など怖い生活習慣病の発症リスクを下げる、さらには骨粗しょう症や認知症の予防効果まで期待できると言われるポリフェノール。

しかし一方で、脂質やタンパク質などの栄養素と違い、腸から体内への吸収率が極めて低いとされるポリフェノールが、一体どうやって抗酸化作用やその他の生体調節機能を顕著に発揮し、上記のようなあらゆるメリットを私たちにもたらすことができるのか?

この謎は「ポリフェノール・パラドックス」と呼ばれ、あらゆる研究・解析技術が進んだ現在でもなお、各国の専門家によって科学的探求が精力的に続けられている興味深い分野です。


この記事では、



このようなポリフェノールについてとても関心の高い疑問に対し、分かりやすくご説明したいと思います。

【目次】

★見出しタイトルの一覧です。
ブログの仕様上、リンクはできませんが、スクロールして興味ある個所からご覧ください。

1.ポリフェノールに“抗酸化作用”が期待できるのはなぜ? そのメカニズムとは?

2.ポリフェノールに、肥満や生活習慣病予防などあらゆる効果を期待できるのはなぜ?

3.ポリフェノールが炎症を抑制する仕組みとは? それによる具体的な効果とは?

① 抗酸化作用によるもの
② 植物種や異性体によっても異なる、それぞれの生体調節機能によるもの
③ 炎症の抑制により、ポリフェノールに期待される効果や効能とは?

4.“ポリフェノール・パラドックス”の謎とは?

5.ポリフェノールの含有量が多い食品には何がある?

6.カカオ・チョコレートの効果効能など関連記事のご紹介









1.ポリフェノールに“抗酸化作用”が期待できるのはなぜ? そのメカニズムとは?


カカオに限らず、緑茶やワイン、果物やスパイス等に含まれるあらゆるポリフェノール類には「抗酸化作用がある」と言われます。

ポリフェノール (polyphenol) の“ポリ”とは、「複数の、多数の」という意味を表す接頭語です。

そして“フェノール”とは、ベンゼン環に水酸基 (OH:酸素原子1個と水素原子1個が結びついたもの) が幾つか結合した化学物質を言います。


ベンゼンという物質は、石油やアルコールの仲間であり「芳香族」に属します。

このベンゼンに多く含まれる“ベンゼン環”は、6個の炭素原子が環の形に繋がって正六角形をなし、その各炭素原子に水素原子が1個ずつ結合した構造をしています。


下の図ですね。
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がベンゼン環の化学構造 (Cが炭素原子、Hが水素原子)。
これを慣習的に のように書き表すことがよくあります。


このベンゼン環のうちの水素原子1個が、水酸基 (上にも書きましたが、酸素原子1個+水素原子1個)に置き換わったものが“フェノール”と呼ばれる物質です。
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上記のベンゼン環と比較して、外側のHの1つがOHに置き換わっているのが分かると思います。
ちなみにフェノールも、同じく のように書き表します。


そして、このフェノールが幾つも重合したり、糖やタンパク質などと結合して複雑な構造を為しているものが「ポリフェノール」と呼ばれます。

つまりポリフェノールは、その構造に水酸基“OH”をたくさん持つことになるのです。

例えば、カカオや黒大豆に多いエビカテキンやプロシアニジンと呼ばれる物質は、下の図のような構造になっています。
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「プロシアニジンの機能性」より引用させていただきました。

エビカテキンにもプロシアニジンにも、水酸基“OH”が外環に数多く付いているのが、上の図からもよく分かると思います。


この、酸素原子1個と水素原子1個の結合物である水酸基は、その性質として “非常に素早く酸化されやすい” という特徴があります。

従って、ポリフェノールが私たちの体内に入り活性酸素に出会うと、細胞膜やコレステロールなど 酸化のリスクが高い組織や成分の代わりに自らがいち早く酸化される ことで、これらの大切な脂質が酸化されダメージを受けるのを防ぎます。

またそれと同時に、ポリフェノールを酸化した活性酸素自身は還元されて酸化力を失いますから、活性酸素の無害化=除去がそこで行われたことになります。


さらに水酸基には、金属イオンを捕捉する能力があるため、ポリフェノールは体内に遊離する銅や鉄イオン等をつかまえてそのまま自らが排泄されることで、金属イオンを体外に排出する“キレート作用”があります

金属イオンは往々にして酸化反応の引き金となりやすいため、このキレート作用もまた、ポリフェノールの抗酸化力を支えていると言えるでしょう。

以上が、全般的なポリフェノールによる抗酸化作用の具体的なメカニズムです。


参考資料:一般財団法人 日本食品分析センター「ポリフェノールと抗酸化性」





2.ポリフェノールに、肥満や生活習慣病予防などあらゆる効果を期待できるのはなぜ?


これらの抗酸化作用が私たちの身体にもたらす具体的な効能としては、

  • ・肌・血管・内臓機能などの老化を防ぎ、若々しさや健康を維持する。
  • ・ガン・動脈硬化・アレルギーなど、さまざまな生活習慣病や現代病のリスクを抑える。

…などが挙げられます。


あるいは逆に言えば、上記のような健康上のメリットの大半が、要は ポリフェノールの優れた「抗酸化作用」によってほぼ説明が付いてしまう と言っても良いでしょう。


ポリフェノールの強力な抗酸化作用のメカニズムは、これまで述べてきた化学構造上の理由だけに留まりません。

単にそれ自体が活性酸素を還元しやすい性質を持つだけでなく、ポリフェノールは あらゆる機能を持った情報伝達物質として細胞間を行ったり来たりして、多彩な生理活性を及ぼす ことが知られています。


特に、ストレスや加齢により血管や脂肪組織で多発してしまう“炎症反応”に対し、いろんな受容体に結合したり酵素を活性化するなど、細胞に直接作用して体内の抗炎症システムを促し、最終的に炎症を鎮めるためのサポートをする働きは、動脈硬化やガンなど重篤な生活習慣病の発症リスクを低減する効果を大いに期待できるものです。

ポリフェノールになぜこのような効果を期待できるのか、それをより明確に理解していただくためには、次項にご説明する『ポリフェノールが炎症を抑制する仕組みとは? それによる具体的な効果とは?』をご覧いただくのが一番の近道かと思います。






3.ポリフェノールが炎症を抑制する仕組みとは? それによる具体的な効果とは?


① 抗酸化作用によるもの


現代社会に深刻な広がりを見せる、動脈硬化をはじめとしたさまざまな血管疾患 (高血圧・糖尿病・心不全・脳卒中、その他) やガン、アレルギーなど、私たちを脅かす さまざまな生活習慣病が“炎症”と大きな繋がりを持っています

特に、炎症がなかなか収束しないうちに次の炎症が発生し…ということの繰り返しで、体内に常に炎症が起こっている「慢性炎症」の状態は、自覚症状のないうちに全身の血管を傷つけて細胞や組織の老化を招き、上記のような命に関わる現代病の発症リスクを高めます。

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炎症 とは、ウィルスや化学物質など外敵の侵入、あるいは紫外線など外からの悪い刺激によって身体の組織が損傷を受けたときに、外敵から身を守り、そして損傷した部分を修復しようとして起こる生体反応です。

特に、外から入ってきた有害な異物を駆逐するために、白血球など免疫細胞が総動員され、免疫細胞は体内でつくり出された “活性酸素” を用いて対抗します。

活性酸素には、相手を酸化させて無力化するという毒性があるので、有害な異物を殺菌や消毒するのに有効なわけですね。


ところがこの活性酸素の毒性は、当然ながら私たち自身の生体組織にとっても有害であり、活性酸素が体内に過剰につくられてしまうと、今度は自らの細胞や組織を傷つけてしまいます。

こうして自らの細胞や組織が活性酸素に傷つけられると、そこで再び生体保護のために炎症反応が引き起こされ、免疫細胞と活性酸素がそこに集まってしまいます。

つまり、いったん炎症反応が過剰に大きくなってしまうと、活性酸素が次から次に増えてしまい、炎症が炎症を呼びいつまでたっても収まらないという事態になってしまうのです。


ということは、逆に活性酸素を減らすことができれば、一つの炎症が鎮まろうとするときに余分な活性酸素のせいで次の炎症を引き起こしてしまう…といった事態を少なくしていくことで、徐々に炎症を抑え、体内に平和な健康状態を取り戻すことができますね。

その働きが大いに期待されるのが、先にご説明したように、水酸基 (OH) の多い化学構造で活性酸素を還元・無害化する能力の高い“ポリフェノール” であり、その抗酸化力で炎症時に生じる余分な活性酸素を無害化して、血管や組織の炎症を抑えることができると考えられます。


② 植物種や異性体によっても異なる、それぞれの生体調節機能によるもの


no-titleまたポリフェノールは、単に自らが抗酸化物質として働くだけでなく、血管内皮細胞の内外を出入りしたり細胞同士を行ったり来たりする 情報伝達物質 として働きます。

そして、活性酸素をつくり出す酵素や過酸化脂質をつくり出す酵素を不活性化し、細胞による活性酸素の生成を抑えることで、血管の炎症をしずめる作用もあると考えられています。

さらにポリフェノールの種類によっては、血圧を上昇させるアンジオテンシンという酵素を不活性化する、インスリン分泌を促すインクレチンと呼ばれるホルモンの分泌を促す…等、私たちの健康に役立つ個々の生理作用を持っていることが明らかになっています。

ポリフェノールには、元は同じ物質であってもその複数がさまざまな形で結合した無数の ポリマー と呼ばれる重合体が存在し、このように少し結合の仕方や分子量が違うだけでも、その発揮する生理作用も異なってくることが知られています。


③ 炎症の抑制により、ポリフェノールに期待される効果や効能とは?


このように、抗酸化力やその他の生理機能により万病の元となる炎症をしずめる作用を持つポリフェノールは、特に 血管炎症を起源とする動脈硬化や心疾患・脳卒中など、現代人の死因の上位を占める生活習慣病の予防効果が大いに期待 されています。


さらに、若い人をも苦しめる アレルギー や、女性の悩みの種である 肌荒れ なども、活性酸素を元凶とする炎症や免疫反応を抑えることで改善や予防に繋がるとされます。





4.“ポリフェノール・パラドックス”の謎とは?


ポリフェノールの摂取が体内に及ぼす影響については、ヒトを使った試験や年月をかけた調査など規模の大きな研究が幾つも行われ、抗酸化・抗炎症・心血管疾患の改善や予防などの効果が確かに現れることは科学的に示されているといってもよいようです。

しかし一方で、ヒトの腸管から吸収されにくい、あるいは吸収されても分解代謝されてしまうため、ポリフェノールという物質そのものの血中濃度はどうしても低いものになってしまう…という状況の中で、なぜそれほどに顕著な作用を発揮できるのか…これが「ポリフェノール・パラドックス」と呼ばれ、最先端の医学・栄養学的知識を持ってしても未だに解決できない大きな疑問です。


しかし、世界中の優秀な研究者たちが日夜さまざまな研究を続けて真相解明のアプローチを行っており、そこから幾つかの興味深い仮説が現れてもいます。

この“ポリフェノール・パラドックス”を巡る最新の科学的知見については、以下の別記事に分かりやすくまとめていますので、よろしかったらご覧ください。
オススメ! ポリフェノール・パラドックスの謎…吸収されにくいのになぜ効果があるの?



5.ポリフェノールの含有量が多い食品には何がある?


少し前まではポリフェノールと言えば、ブルーベリーやなすに多いアントシアニン、大豆のイソフラボン、玉ねぎやブロッコリーに含まれるケルセチンなど、野菜や果物に多いイメージがあったような気がします。

しかし今では、むしろ 緑茶、コーヒー、ワイン、ココアなど、飲み物系にポリフェノール含有量が高いものがある ことが知られていますね。


下の図は、少し前の資料ですが、東京農業大学があらゆる植物性食品の機能性成分を解析して作成した「ポリフェノール含量ピラミッド」です。

これを見ると、ポリフェノールの多い食品は何かが一目で分かるので、毎日のヘルシーな食生活に大いに役立てていただけるかと思います。

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※下記より引用させていただきました。
東京農業大学 「食と農」の博物館 展示案内 (東京農業大学Webサイト内の pdf)




6.カカオ・チョコレートの効果効能など関連記事のご紹介








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